はじめに:米国での現地就職
前回記事ではMBA卒業後に起業を目指す方々向けに記事を書きましたが、今回は米国での現地就職に焦点を当てたいと思います。今回はMBA後の米国での現地就職を定量的・定性的に、かつ実体験を含めて紹介します。自分は起業家なため、米国企業へMBA卒業後に就職していませんが、周りの同級生は皆テック企業やコンサル・金融で働いており、その実情を踏まえて現地就職についてお伝えできればと思っています。MBA取得後にアメリカ現地就職を検討している人は、是非データポイントの一つとして参考にしてください。
米国MBAにおける進路先
米国のMBA卒業後の進路先として非常に多いのは、コンサルティング業界、金融業界、テクノロジー業界、という三本柱かと思います。後に記載しますが就職率は学校によっても大きく変わりますので、自身が行きたい業界がある場合は自分の(行きたい)学校のCareer reportを見てみてください。
- コンサル
いまだMBA生から圧倒的な人気で、イメージほぼ半分以上の学生は応募するのではないかというレベルです。米国でのコンサルティングファーム就職というとInternational生には難しいのではないかという声をよくいただきます。
確かに簡単ではありません。就職された友人を見ているとすごく努力していますし、もともとすごく優秀な方が多いです。しかし、適切な努力をすれば可能だと思っています。
Internationalの学生でコンサルに就職している多くの方は、英語圏出身(イギリス、シンガポール、オーストラリア)、もしくはアメリカ人ではないが学部時代にアメリカの大学に通っていた人が多いです。また、もともと自国でコンサルティング会社に所属していた方もアメリカでのコンサルに就職に成功している多くの事例があります。というのも、やはり語学的、文化的、ビジネス慣習的に、こういった方々は他のInternational生と比べてもコンサル就職で有利に働くことが多いです。
では、そうでない人(もともとコンサル出身ではなく、大学もアメリカではなく、英語を日常では使わない国の出身者)は不可能なのかというとそうでもありません。コンサルティング会社を目指す人が少しでも希望を持てるように下記にいくつか”そうでない人”の例をあげます。
- バングラデシュのタバコ会社→McKinsey
- 韓国のTech会社→BCG
- レバノン/UAEの建設会社→Bain
また、アメリカでのコンサル就活はどのオフィスに応募するかも重要となってきます。もともとTechバックグラウンドがある人はSan Franciscoのオフィスに行く人が多いですし、自動車バックグラウンドの人はDetroit、金融バックグラウンドの人はNYなど、応募するオフィスの特徴と自分のバックグラウンドの業界があっているとより魅力的な候補者として捉えられます。(もちろんTechバックグラウンドがない人がSFオフィスに行くこともありますし、金融バックグラウンドがない人がNYオフィスに行くこともあります。)
逆を考えてもらうとわかりやすいかもしれません。東京オフィスに来る人はやはりある程度日本の言語であったり文化に明るい人が多い印象です。(そうではない人ももちろんいますが。)
地頭の良さや論理的思考力では、トップレベルの日本からの学生も匹敵しますが、やはり英語力と英語をベースとした考え方で同じスピードでのアウトプットを出す事は難易度が高いと思います。ただ、だからと言って諦めることはなく、要はどの程度努力したかが非常に重要です。
またMBAという画一化した学歴のため、基本的にはMBA Associateというポジションになる事も踏まえないといけません。自分の同級生が母国の南米M社のManagerで働いた後に、アメリカのMBA Internで就職活動するとB社のMBA Associateに降格されるというよくわからない事も目撃しました。彼はなぜ実務経験がなくて学部からそのままMBA来ている人間もいる中で、なんで彼らと同じポジションなんだと文句を言ってました。
- 金融
金融の中では投資銀行に就職する人が一番多いです。就職活動にアグレッシブな人が取る印象で、ネットワーキングやリファレンスが非常に重要です。どこの学校もかなりStructuredされたプロセスが用意されており、夏のインターンのための就職活動がかなり忙しいと思います。
数は多くないですがベンチャーキャピタル(VC)に就職する人もいます。人気、ネットワーキング、そしてファンド設立のタイミングと運。非常に少数で、同級生でベンチャーキャピタルに就職していった人間はみんな一味違った雰囲気の学生でした。
こちらも数は多くないですがヘッジファンドで仕事を獲得する人もいます。VCよりかはタイミングと運の要素が少ないと思いますが、採用する人数が非常に少ないのでその分競争も激化していると思いうます。
その他Financial Leadership Programを提供している企業も一定数あります。2‐3年の決められた年数の中でFinancial Planning and Analysis (FP&A)やCorporate Financeなどいくつかの役割をローテーションで行うプログラムです。
- テクノロジー
いわゆるビッグテック(Amazon, Google, Meta, Microsoft, Apple等)から、中小規模のテクノロジー企業も含めてかなりの人数が就職します。コンサルティングや金融に比べて、報酬が高い割には激務ではない事もあって非常に人気です。
給与のイメージとしてはだいたい給与160~250Kのレンジで、生活イメージは15K per monthでGross 10K in cashで手取りし、3-4K rent, 1K for food/spending, 1-2K for fun、2-4K/monthの残りのうちから借金返済に充てるって感じだと思います。
自分の知り合いでは、卒業後すぐにベース$250K+ボーナス(テック in サンフランシスコ)等もいましたが、一番注意しなければいけない点は、layoffが日常茶飯事であるという点です。1-2年で転職という事もざらなので、スキルセット含めて自分の市場価値をどのように高めるかという点は常に意識をしなければなりません。
実際に就職実態:各学校の統計
各学校でどのような業界への就職が決まっているかを、各学校のCareer Reportを元にまとめてみました。実際に自分がいた2022年と2023年でのキャリアレポートは各学校で出ていたので、下記に各業界に輩出率が高い学校と、各学校での得意分野とで分けて作成してみました。
各業界への就職率が高い3校をオレンジでハイライト

各学校で就職率別にハイライト

各学校での業界範囲が若干異なる点やOther等の内訳が不明な点等もありましたが、大筋正しい内訳になっていると思います。それぞれの学校でどういった業界への就職が多いかといった事もこの表で見えると思います。
就職後の話
- Layoffの問題
米国でのLayoffは本当に日常茶飯事です。2022-2023年は特にlayoffも多い時期ではあったものの、感覚値として全体の2-3割はlayoffになっていた印象です。
我々の同級生の中で耳目を集めた一つの例として、大手のテック企業がMBA卒の内定者(卒業後の6月から勤務開始予定)を5月の就職前にクビにしたという件がありました。本人も卒業後その会社で働くつもりで諸々準備をしていたため、非常にショッキングな出来事でした。ただ、この後の展開もアメリカらしく、同級生や周りの人間が早急にネットワーク紹介やサポートを行ったため、無事7-8月からは近しい企業で勤務を開始していました。
Internationalでlayoffを一度受けると非常に難しい立場に陥ります。理由としては、大きく2点あります。1点目は、OPT期間中の無職となれる期間は90日であるため、この90日中に早急に仕事を見つける必要があるものの、この期間内にインタビューを全てこなして働き口を見つける事の難しさ。2点目は、雇用者側が1年を切る有期で採用するのかどうかという、雇用期間が短期になる中での就職活動になる実質的な不利。もしSTEM OPTがない場合は1年未満の短期となる点に加え、H1Bへ応募するに至る人事評価がなされない可能性もあり、実質的に翌年以降働けない事が露出すると雇用者側は採用を見送る可能性が非常に高くなります。
この2点はいずれもスキルセットではないため、とても優秀な人材であっても大規模なlayoffを受けると、次の就職に非常に困難な状況に陥る点を理解しないといけません。
まとめ
米国MBA卒業後の現地就職について、データと実体験を踏まえてお伝えしてきました。International学生が米国で就職することは「可能」ですが「簡単ではない」というのが正直なところです。バングラデシュからMcKinsey、韓国からBCG、レバノンからBainなど、英語圏以外の出身者でも内定を獲得している事例は数多くあります。ただし、英語力、文化的理解、ビジネス慣習の違いなど、乗り越えるべき壁は確かに存在します。学校選びも重要で、志望校のCareer Reportで「この学校から、自分の行きたい業界に、International学生が何人就職しているか」を必ず確認してください。
最も理解しておくべきは、Layoffのリスクです。2022-2023年は感覚値として2-3割の人がLayoffを経験しており、テック企業では1-2年での転職も珍しくありません。International学生にとって、OPT期間中の無職期間は90日まで、STEM OPTを含めても累計150日までしか許されないため、Layoffは致命的です。「この会社で定年まで」という発想ではなく、「常に次のオプションを持っておく」マインドセットが必要です。また、OPT、STEM OPT、H-1Bというビザのパスを理解し、戦略的に進めることも不可欠です。
それでも米国で働く価値はあると思います。MBA卒業後なら好待遇な給与が期待でき、グローバル企業での実務経験は、その後のキャリアに大きなプラスになります。米国現地就職を目指すなら、「なぜ自分は米国で働きたいのか」を明確にした方が良いと思います。この「Why」が明確であれば、厳しい就職活動も、ビザの不安も、Layoffのリスクも、乗り越えられます。
私自身もアメリカに残る選択肢を取りましたが、同級生たちが米国企業で活躍する姿を見て、「適切な準備と努力をすれば、International学生でも米国で成功できる」と確信しています。この記事が、米国MBA後の現地就職を考えている皆さんの参考になれば嬉しいです。