【インタビュー#2】外資SaaS営業からAmazon本社へ:T.S.さんが語る、「自分から動く」ことの本当の意味

はじめに

今回のDreamAcrossインタビューでは、外資系SaaS企業の日本オフィスで営業キャリアを積んだ後、Kellogg MBA(Northwestern大学)を経て、現在はAmazonの米国本社でGo-to-Marketの仕事をされているT.S.さんにお話を伺いました。

「アメリカに行きたい」という漠然とした思いを、LinkedInでのコールドリーチアウトという具体的な行動に変え、自分の力でキャリアを切り拓いてきたT.S.さん。マジョリティからマイノリティになるという経験を通じて感じたこと、アメリカ企業で働くリアルな姿まで、率直に語っていただきました。

T.S.さんのプロフィール

T.S.さんは幼少期にロンドンで約7年間過ごした後、日本に帰国。東京で育ち、大学卒業後は米国発のSaaS企業の日本オフィスでセールスとしてキャリアをスタートしました。急成長中のテック企業で営業の面白さを実感しつつも、「本社側で意思決定する側に行きたい」「テックの中心であるアメリカに行きたい」という思いが強まり、MBA進学を決意。Kelloggに入学し、卒業後は米国に残り、現在はAmazon Businessでプロダクトチームとセールスチームの橋渡し役となるGo-to-Marketの仕事をされています。

Childhood in London rainy days

なぜアメリカへ?「決める側に行きたい」という衝動

T.S.さんがアメリカを目指した背景には、大きく2つの要因がありました。

1つ目は、外資系テック企業の日本オフィスで働く中で感じた「情報の流れ方」への違和感。「基本的に情報は本社が何かを決めて、それが日本に降りてくる。日本オフィスは営業拠点としてはすごく良かったけど、いろいろ決めていく側に行くのってすごく楽しそうだなと漠然と思った」とT.S.さんは振り返ります。テック業界の「ど真ん中」に行くならアメリカだ。自分自身がアメリカの会社に勤めていたからこそ、その思いはより強まったそうです。

2つ目は、お兄さんがロンドンでMBAを取得して現地で就職したこと。「海外に行きたいという漠然とした思いと、MBAという具体的な道がちょうどつながった」というタイミングの一致が、決断を後押ししました。

もう1つ、T.S.さんが正直に語ってくれたのが「焦り」の存在です。「セールスをやる以上、売上の大きさで自分の業績が決まる。だとしたら、お客さんのパイが大きいマーケットにいた方がいい。日本でテックのソリューションを売り続けることと、アメリカの巨大なマーケットで売ることの差を考えたとき、このまま日本でいいのかなという焦りがあった」。その焦りが、次に紹介するLinkedInでのコールドリーチアウトへとつながっていきます。

LinkedInコールドリーチアウト:15通送って、3〜4通返ってきた話

アメリカに行きたいと決めたものの、具体的な方法が分からなかったT.S.さん。取った行動は、LinkedInでアメリカにいる日本人にメッセージを送ることでした。

「Tech企業でアメリカにいる人をLinkedInで絞り込んで、15人くらいにメッセージを送った。『どうやってアメリカに行ったんですか?何がいいですか?』って。返信が来たのは3〜4人。でも、その中の1人はすごく丁寧に選択肢を整理して教えてくれた」。

その結果見えてきた選択肢の中で、「自分で一番コントロールが効きそうだった」のがMBAだったといいます。社内トランスファーや直接の海外就職、起業なども候補に上がったものの、時間軸をコントロールしやすいMBAが最も現実的だと判断したそうです。

T.S.さんにとってコールドリーチアウトは、セールスとして日常的にやっていたことの延長線上。でも、日本ではまだまだ「知らない人にいきなりメッセージを送る」ことに抵抗がある方も多いはず。そこについてT.S.さんはこう語ります。

「自分がなりたい姿のキャリアを歩んでいる人がLinkedInで見つかるのに、メッセージを送らないのはすごくもったいない。10人送って3人返信が来るかもしれないんだったら、やらない理由がない。無視されたとしても、そもそも知らない人だから別にいい。それに、リーチアウトされた側も意外と嬉しいものですよ」。

マジョリティからマイノリティへ「待っていても何も始まらない」

アメリカ生活で一番大きかった気づきとして、T.S.さんが挙げたのは「自分がマイノリティになった」という経験です。

「東京で育って、ある程度良い大学にも行けて、待ちの姿勢でも大丈夫だった瞬間が結構あった。むしろこっちから選ぶような立場にいたかもしれない。でもアメリカでは全く逆。自分からアクションを取っていかないと、人間関係も、情報も、何も始まらない」。

一方で、アメリカは移民国家としてのインフラが整っていることにも感謝していると言います。「外国人に対してすごく慣れている。英語が第一言語じゃない人たちに対しても。銀行口座も作りやすいし、逆にアメリカから日本に行ってすごく苦労した人の話も聞く。そういう受け入れ体制の良さは、とてもいいギャップでした」。

私も話を聞いていて、Kelloggで使っていたSlackの話を思い出しました。「チャンネルがめちゃくちゃたくさんあって、重要な情報もどんどん流れていく。自分から能動的にキャッチしに行かないと、大事な情報が埋もれていく。日本にいた時は、自分から情報を取りに行かなくても降りてきていたことが結構あったんだなと気づかされた。」

Feeling lonly, majority to minority

Amazon本社で感じた「仕組みの強さ」

アメリカ企業と日本企業の違いについて聞くと、T.S.さんの答えは明快でした。「アメリカのすごさは、個人のレベルというよりも、仕組みやルールがよくできているところ。個人の優秀さに頼るのではなく、仕組みで全体の質を上げている」。

その象徴的な例として挙げてくれたのが、アメリカの雇用の仕組み。「すぐにクビにできる環境だから、従業員は自分が会社に対してバリューを出せているかを常に考えざるを得ない。その分、会社と従業員のロイヤルティは日本に比べてかなり低い。でも、お互いがお互いに利益を出せているかという『利害関係』はとてもクリア」。

Amazonでは、どのオフィスに行ってもいいし、好きな席に座ってもいい。ただし「バリューを出してくださいね」という会社のスタンスは明確で、従業員側も「バリュー出すからコンペンセーション(給料)ちょうだいね。くれないなら、もっといい条件の会社に行く」というスタンス。日本的な「情」の関係とは全く違う、ドライだけど明快な関係性がそこにはあるそうです。

「寂しくて帰りたい」:向き不向きは正直ある

印象的だったのは、T.S.さんが同僚のエピソードを率直に共有してくれたことです。

「今、同じニューヨークのオフィスで働いているアジア圏出身の子がいるんだけど、正直帰りたいって言ってる。理由は、アジアのオフィスの方がもっとウェットだった。ランチを一緒に食べたり、人間関係があったりして、ただ仕事して帰るだけじゃなかった。仕事を一緒にしている人がアメリカ内に散らばってて、同じオフィスにないことも原因の一つかも。ニューヨークにネットワークもコミュニティもないから、まとめて言うとすごく寂しいと」。

T.S.さん自身は「事前に準備することは正直難しい。入ってみて、感じて、そこからどう変えていくかだと思う」と話していましたが、こうしたリアルな声を事前に知っておくことは、渡米を考えている方にとって大きな意味があるのではないでしょうか。サバサバした環境で自分のペースを作れる人には最高のフィールドですし、人間関係の温かさを大切にしたい人には覚悟が必要な部分もある。その正直な二面性を、T.S.さんは隠さず教えてくれました。

おわりに

T.S.さんのインタビューを通じて一貫していたメッセージは、「自分から動く」ということ。LinkedInでのコールドリーチアウトも、アメリカでのコミュニティ作りも、仕事でバリューを出すことも、全て自分から一歩を踏み出すことから始まっています。

日本にいると、待っていても情報が降りてきたり、コミュニティが自然にできたりする場面があると思います。でもアメリカでは、自分がアクションを起こさない限り、何も始まらないことが多い。そしてそのアクションに対して、アメリカという国は驚くほどオープンに応えてくれる、そんなメッセージが、T.S.さんの言葉の端々から伝わってきました。

「10人にメッセージを送って、3人から返信が来るかもしれないのに、送らないのはもったいない」。この言葉を胸に、まずは一歩を踏み出してみませんか?

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