【インタビュー】コンサルから米国ヘッジファンドへ: アメリカで「リスクを取る」ということ

はじめに

今回のDreamAcrossインタビューでは外資系コンサルティングファームで6年間のキャリアを積んだ後、Kellogg MBA(Northwestern大学)を経て、現在は米国西海岸で日本株投資の仕事をされているT.D.さんにお話を伺いました。

コンサルから金融へ。日本からアメリカへ。大きなキャリアチェンジを2つ同時に成し遂げたT.D.さんの決断の裏側には、どんな思いがあったのか。アメリカで実際に働いてみて感じたこと、そして日本に対する率直な想いまで、じっくり語っていただきました。

T.D.さんのプロフィール

T.D.さんは日本で生まれ育ち、大学卒業後に大手コンサルティングファームに入社。約6年間、戦略コンサルタントとして国内外のプロジェクトに携わりました。出張ベースでアメリカやヨーロッパ、アジアで働く経験もあったそうですが、「長期間アメリカに住んで働く」という経験はまだなかったとのこと。

30歳を目前にしたタイミングで、キャリアの棚卸しをしたいという思いからMBA進学を決意。2023年にKelloggに入学し、卒業後はアメリカに残って、現在は西海岸でヘッジファンドで日本株投資の仕事をされています。

なぜMBAへ?30歳での「キャリアの棚卸し」

T.D.さんがMBAを目指した理由は、大きく2つあったそうです。

1つ目は、キャリアの転換点として。コンサルで6年間働く中で、仕事の進め方やベーシックなスキルは十分に身についた。社内でのキャリアパスもよく見えた。でも、「自分が今まで考えていなかったようなことに挑戦するなら、ジュニアのロールで入れる最後のチャンスかもしれない」と感じたそうです。

2つ目は、グローバルで活躍できる人間になりたいという思い。「ビジネスの本場はやっぱりアメリカ。アメリカ人がどういう風に考えて、どういうカルチャーでビジネスをやっているのかをしっかり学びたかった」とT.D.さんは語ります。

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コンサルから金融へ:ファイナンスという「ギャップ」を埋める

コンサルティングから金融という、一見大きなジャンプに見えるキャリアチェンジ。その背景には、MBAの授業で感じた「ファイナンスのギャップ」があったそうです。

「オペレーションや戦略の話は、コンサル経験があるのである程度わかる。でも、MBAの授業で自分の知識のギャップを感じたのがファイナンスだった。将来的にオールラウンドな経営人材になるには、ここを埋めなければいけないと思った」とT.D.さん。

さらに、日本という国への貢献も見据えた選択だったといいます。「日本企業は、オペレーションはすごくいい。戦略も、実はそんなに間違ったことはしていないケースが多いと個人的には思っている。でも、資本効率という観点では、日本企業はまだまだ改善の余地がある。日本のさらなるアップサイドをアンロックするには、ファイナンスが必ずキーワードになる。」そう考えたことが、金融の世界に飛び込む大きな後押しになったそうです。

金融の中でもヘッジファンドを選んだ理由としては、VC(ベンチャーキャピタル)に比べて試行回数が多く、結果が出るまでのサイクルが短いこと。PDCAを素早く回してスキルを高められる環境だと感じたことが決め手だったとのことです。

MBA卒業後、アメリカに残った理由

T.D.さんがMBA卒業後にアメリカに残ることを選んだ背景には、「不可逆性」という考え方がありました。

「外国人として、アメリカで働くにはビザが必要。MBA直後だったら学生ビザの延長で働けるけど、一度日本に帰ってからまたアメリカに戻るのは現実的にかなり難しい。このチャンスを逃したくなかった」。加えて、Kelloggでの2年間の生活が純粋に楽しかったことも大きかったようです。

アメリカの魅力:「リスクを取ることが称賛される文化」

T.D.さんに「日本からアメリカに来ることを考えている人に伝えたいこと」を聞いたところ、とても印象的な答えが返ってきました。

「アメリカではリスクを取りやすい。極限までリスクを取って、極限まで価値を求めて、全力でベットする。そういう人たちが結構たくさんいる。そして、たとえ失敗したとしても『チャレンジした人なんだ』と称賛されるカルチャーがある。これはアメリカの一番好きなところの一つです」。

自分の場合も、コンサルから金融へ、日本からアメリカへという全く違うフィールドに飛び込んだこと自体が、アメリカに来て取れたリスクの一つだったと振り返ります。「昔の自分だったら、もっと悩んで結局やらなかったかもしれない決断。アメリカに来て、変わったところの一つかもしれません」。

もう一つ強調されていたのが、移民国家としてのアメリカの懐の深さです。「特に西海岸は本当に多様で、英語に多少のハードルがあっても、その場に提供できる価値があれば受け入れてもらえる。日本のように言語が100%求められる環境とはかなり違う」とのこと。

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それでも日本に帰りたい:エモーショナルな決断

興味深いのは、アメリカで充実したキャリアを築きながらも、T.D.さんが「中期的には日本に帰りたい」と考えていることです。

「これはロジカルな決断ではなく、エモーショナルな決断。日本という国が好きだし、最終的にそこに貢献したいと思うなら、やっぱり住む場所もそっちがいいかなと思っています。」

実際、今の仕事を通じて日本経済のマクロな課題(デフレマインドによる価格据え置きの悪循環や、海外企業への富の流出、資本効率の改善余地)が鮮明に見えるようになったそうです。「投資家としてのアクセスがあるからこそ分かることがたくさんある。将来的に日本に戻ったとき、この経験を活かしたい」と語ってくれました。

投資家の目で見た日本:「値上げしない」ことの本当のコスト

インタビューの中で特に印象的だったのが、日本の「値上げしない文化」に対するT.D.さんの視点です。

「消費者としては、日本に帰って牛丼が500円で食べられるのはありがたい。でも、企業が値上げしないと研究開発などに回すお金もなく、最終的に提供する価値がどんどん下がっていく。一方でGoogleやAppleなどが容赦なく価格を上げていく中で、国としてはお金が海外に流出していってしまう。今は鎖国の時代ではないので、国内でも値上げをして研究開発にお金を投じ、提供する価値をどんどん上げていかないと、結果的にどんどん海外に富が流出してしまう。そもそも国内で値上げをすると、消費者としては出費が増えるがその分誰かの収入が増えていることになるので、一定のインフレは起こるべき」

ただし、T.D.さんは日本の将来に対して悲観的ではないといいます。「まだ全然終わりではない。今がある意味で一番いいタイミング。イメージ40代より若い世代はそれより上の世代とは考えが違い、古い慣習に囚われすぎない人が多いように思う。世代交代が進めば、日本は変わっていけると思う」。

また、ヘルスケアに関しては「日本の国民皆保険は正しい。アメリカのヘルスケアシステムの方がむしろ壊れている」ときっぱり。必要な医療が必要な人に届くという点では、日本の制度は世界的に見ても素晴らしいと評価していました。この点は、アメリカで実際に生活してみたからこそ実感する部分かもしれません。

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おわりに

T.D.さんのお話を聞いて改めて感じたのは、「アメリカに来ること」そのものがリスクテイキングであり、そのリスクを取った先に、自分でも予想しなかった成長や視点の変化が待っているということです。

コンサルから金融へ。日本からアメリカへ。一つひとつの決断は簡単ではなかったはずですが、「不可逆なチャンスは、迷ったら取る」というT.D.さんの考え方は、これからアメリカを目指す方にとっても大きなヒントになるのではないでしょうか。

迷っているなら、来た方がいい! T.D.さんの言葉が、印象に残るインタビューでした。

あなたのアメリカでの挑戦、応援しています!

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