渡米初週、Chipotleのレジで店員に何かを聞かれ、5秒固まりました。言われたのは “For here or to go?”(店内で?持ち帰りで?)。中学英語の単語しかありません。TOEFLは10点を超えていました。それでも、聞き取れなかった。
留学経験者なら、誰もが似た瞬間を持っています。英語の壁は、長文読解でも難単語でもなく、こういう「簡単なはずの一言」に、いきなり現れます。
理由は3つあります。①音が違う(”For here or to go?” は「フォヒアォトゥゴ?」と一息で飛んでくる)。②文脈が読めない(なぜ今それを聞かれるのかが分からない)。③心の準備がない(教科書のリスニングと違い、現地の英語は前置きなく突然始まる)。
それ以外にもアクセントやスピード、様々な理由で「学校英語」とは全く異なる確度で英語が発声されます。
今日は、学校で習った単語しか使われていないのに、日本人が高確率で固まる日常フレーズを10個紹介します。すべて、アメリカの日常で毎日飛んでくる言葉です。

1. Did you find everything OK?
場面:スーパーのレジ
直訳は「すべて問題なく見つかりましたか?」。単語は全部中1レベルです。でも「なぜレジの人が急にそれを聞く?」と意図が読めずに固まります。正体はただの接客の挨拶。アメリカでは他人との会話を気さくに楽しむ文化もあるので、「今日はこれこれを探していて見つかってよかったよ」といった返答をすると会話も弾みますし、英会話の勉強にもなるでしょう。実際に英語圏にいる方は、いわゆるレストランやスーパー等の日常会話でどんどん返答していくと英語力の伸びが早いと思います。”Yes, thank you.” で十分ですが、それでは英語力は伸びていきません。
2. Are you still working on that?
場面:レストランで、皿がまだ空いていないとき
work を「働く」としか習っていないと「え、仕事?」と混乱します。意味は「まだ食べている途中ですか?(お皿を下げてもいい?)」。終わっていれば “I’m done, thank you.”、まだなら “Still working on it.” と返します。
3. You’re all set.
場面:会計後、手続きの完了後、あらゆる場所で
set=「セットする」の記憶が邪魔をして、意味が取れません。「これで完了です/もう行って大丈夫ですよ」の意味です。ホテルでも、役所でも、病院でも言われます。”Great, thank you!” でOK。質問があれば、どんどん聞きましょう!ホテルなら、wifiのパスワード、朝ごはんがあるか?、この近くにおすすめのレストランはあるか?、どこか訪問すべき場所はあるか?、などなど会話を楽しむコツはいっぱいあると思います!
4. Have a good one.
場面:店を出るとき、別れ際。
「one って何?」と一瞬フリーズする定番です。one は day や evening の代わりで、「良い一日を」のカジュアル版。”You too!” と返せたら、もう現地の人です。
5. Room for cream?
場面:カフェでコーヒーを注文したとき
room=部屋、としか出てこないと完全に迷子になります。「クリームを入れる分の余白を残しますか?」の意味。room に「スペース・余地」の意味があることは習ったはずなのに、口頭で飛んでくると出てこないのです。いきなりカフェやコーヒーショップでこれを言われると少し戸惑うかもしれません。
6. Can I get a name for the order?
場面:カフェやファストフードの注文時
「ご注文につけるお名前をいただけますか?」。カップに名前を書くための質問ですが、実際には “Canigetanameforthorder?” と一息で来るので、初見ではまず聞き取れません。ファーストネームを言えばOK。ちなみに名前のスペルは高確率で間違えられます。それも洗礼ですが、名前をアルファベットで一文字ずつ伝える練習、と、「そういえば自分日本から来ているからこれ日本の名前なんだよね、難しい?他に難しい名前ってよく聞いたりするの?」等と会話を弾ませると英語力もどんどん伸びていきますよ。
7. Would you like to round up?
場面:スーパーやドラッグストアのレジ
round up=「切り上げる」。「お会計の端数を切り上げて、差額を寄付しませんか?」という募金の定型文です。全単語が中学レベルなのに、この文化を知らないと何を提案されたのか全く分かりません。不要なら “No, thank you.” で大丈夫です。最近は聞かれるというよりも、支払時のPOS(クレジットカードをあてる機械)で聞かれる方が多いですね。Panda ExpressもDonationをするかどうかの回答をしてから、支払をするというような形になっています。
8. I’m good.
場面:何かを勧められて、断るとき
「元気です」と習ったはずのフレーズが、現地では「いえ、結構です」という断り文句として飛び交います。”Do you need a bag?” “I’m good.”(袋いりますか?――大丈夫です)。学校で習った “No, thank you.” と同じ働きなのに、good で来ると脳が追いつきません。慣れてしまえば、I’m good = 不要です・大丈夫です、といった意味で返答できるようになってきます。
9. Come again?
場面:こちらの英語が、相手に聞き取れなかったとき
「もう一度言って?」という聞き返しです。直訳の「また来て?」と混乱している間に、会話は流れていきます。皮肉なことに、聞き返されるフレーズそのものが聞き取れない――これが実戦です。自分でも使えるようにしておくと便利です。他にも、「What’s that?」、と言われると同様に、「なんですか?」「何と言いましたか?」、といったイメージです。
10. To stay or to go?
場面:カフェで
“For here or to go?” をようやく克服した頃、今度はこれで固まります。意味は全く同じ「店内?持ち帰り?」。ほかにも “Is this to go?” など、言い方は店によって無限にあります。教科書は正解を一つしか教えてくれませんが、現地は変化球しか投げてきません。
「10個覚えれば安心」は、半分正解で半分間違い
ここまで読んで「この10個を覚えれば大丈夫だ」と思った方へ。それは半分正解で、半分間違いです。
正解の半分。 リスニングは「知っているフレーズしか聞き取れない」世界です。耳は、脳にある表現しか拾えません。この10個を声に出して覚えるだけで、渡米初週の絶望は確実に減ります。だから、準備には、はっきりと意味があります。学校英語も無駄ではありません。あれは土台です。土台がなければ、そもそも変化球に気づくこともできない。
間違いの半分。 現地の英語は、10番のように必ず「習っていない形」で来ます。全パターンの予習は不可能です。つまり、「完璧に準備できた状態」は永遠に来ません。完璧を待っていたら、一生飛行機に乗れない。
だから、結論はこうです。
準備は日本で、完成は現地で
固まる5秒は、留学した全員が通ってきた通過儀礼です。TOEFL110点でも固まります。でも大丈夫。3ヶ月後には、注文の列に並びながら考えごとをして、気づいたら “For here.” と言い終えている自分がいます。その変化は、来た人にしか起きません。
安心してください。みんな、最初はレジから固まります。