アメリカでのチップ制度:どうすればいいの? 

はじめに:アメリカでのチップ制度

学期が始まれば新しい友人たちとみんなでレストランに行くでしょう。そこで直面する問題はチップです。何%払えば良いのか?カフェでも求められた、どうしよう。こんな悩みを抱えたことがありませんか?日本にはないチップという、アメリカならではの制度も、歴史的背景や今の動向、現地人がどのように対応しているかも理解しておくと、渡米してからもスムーズになじめるかもしれません。今回は、アメリカで常に面する事になるチップという習慣についてご紹介します。

チップという概念:どういった費用?

チップ(Tip、日本語発音的にはティップ)とは元々、本来記載されている料金や税金とは別に「サービスを受けたことに対する対価」として払うものと言えるでしょう。具体的には、レストランでサーバー(料理を提供する人)が料理以外の気遣い・サービス・対応をしてくれている事自体に対して払うものです。オーダーした食品に対しては、メニュー記載の金額を払うものの、実際に入店し退店するまでのサービス、という部分に払うのがチップです。日本であれば、これらは全て料理の値段に入っているという認識で支払をしていますが、アメリカやヨーロッパでは入っていないという認識になります。

このチップという習慣がある国(アメリカかヨーロッパが代表的)では、そもそもこれらのサービス業に従事する従業員の給与が低く設定されています。具体的にアメリカで言えば、最低賃金の時給(州によっては州最低賃金、もしくは連邦の最低賃金)がサービス業従事者の給与ベースとなるため、チップでの収入は彼らの生活にとって非常に大きな助けとなります。

具体的な一例として、自分が友人2名と$30/人の食事をレストランでして、1時間滞在していたとしましょう。この対応をしてくれているサーバーは、合計額$90のお会計に対して、チップを受け取る事になります。チップの%についても後述しますが、仮に20%とした時に、このサーバーが受け取る金額は$18となるでしょう。つまり、このサーバーが自分のテーブルにサービスを行って受け取る給与としては、

最低賃金(週によっては$2.13、カリフォルニア州などでは約$17、ワシントン州シアトルでは約$21等)に加えて、このチップの金額が当人の時給になる、という事です。

もちろん、このチップの収入がいくらになるのか、というのは、実際に働いている場所での忙しさ(何テーブル対応するのか、1テーブルで何時間滞在するのか)に加え、どういったサービスなのか(お洒落なレストランなのか、カフェなのか)といった理由で左右していきます。

少し脱線してしまいますが、アメリカのフルサービスレストランでは、テーブルごとに担当のサーバーが決まっています。入店して席に案内された瞬間から、注文を取る、料理を運ぶ、飲み物のおかわりを聞く、お会計を持ってくる、といった全てのやり取りはこの一人のサーバーが担当します。つまり、他のサーバーに「すみません」と声をかけても、「担当を呼びますね」と言われる事が普通です。日本のレストランでは誰に声をかけても対応してもらえますが、アメリカではそうではありません。この仕組みを理解すると、チップの意味合いもより腑に落ちるのではないでしょうか。自分のテーブルに対して責任を持ち、個人としてサービスを提供してくれている、その人に対しての対価がチップである、という構図です。

現地の声:どのように払う?

生まれも育ちもアメリカ、現地の声を聴いてみました。それでもみんな多様なやり方あります。

Aさん

「レシートを見ると、ほぼ必ず税金が記載してある。自分が住む州では税金がだいたい9%、なのでチップにはだいたい記載している税金の2倍の額(実際にオーダーした金額でいうと、18%程になる)を記載している。少しサービスが良かったり、悪かったりという場合はその2倍の金額からプラスマイナスで2-3%を上下するようなイメージ。よほどの事がない限りはだいたい記載の税金の倍くらいで払うのがほとんど。」

Bさん

「レシートを見た際に提案されているチップは、食事代金に税金を加えた合計額でパーセンテージがついている事が多々ある。なので、実際にはオーダーした金額に20%をかけて、記載する事が多い。シンプルに明細をざっと確認した上で、実際のオーダー金額だけを見て2をかけて(10で割るのを忘れないように!)金額を記載すると簡単に済む。」

*このBさんがいっている内容としては、食事代金が$90で税金が$10としたときに、レストランのレシート・端末上でRecommended Tip Amountという項目があり、そこには下記のようになっていることが多い。

  • 18%で$18
  • 20%で$20
  • 23%で$23
  • もしくはカスタム金額

実際ここでの18%である$18はオーダーしている金額$90から見ると20%になっている、という点を指摘しています。このようなケースはレストランによってPOS(決済システム)の設定が内税か外税での%をベースとしているために発生します。

Cさん

レシート見た際に、提案されてるチップ金額と20%の金額見て、切り上げた金額を記載する。具体的には、合計オーダー金額が$90.04で税金が$9.00となっているなら、オーダー金額20%は$18.08となるが、綺麗な数字にまとめるために、実際にチップ金額記載を$17.96とする。これによって、

  • オーダー金額$90.04
  • 税金$9.00
  • チップ額$17.96

合計で$117.00と端数がなくなる金額になる。実際の%としては若干20%を下回るが、ここはサービスが良いか悪いかで$1.00を追加するのかどうかを判断している。

ということでした。どうでしょう?人それぞれの感覚はあるものの、みんながどのように考えているのかの例を見てもらえたでしょうか?重要な点としては、みんなだいたい18-20%をベースにしている点でしょうか、この点をもう少し見てみましょう。

チップの%:いったいいくら払ったらいいの?

次に、実際はいくらのパーセンテージ(割合、%)を払えばいいの?という点を考えてみましょう。少し歴史的な部分を見直すと、

~1970年頃まで:レストランはだいたい10%が一般的

1980年代:ベースが15%へと上がっていった (インフレと物価上昇に伴って)

2000年以降:18%や20%がベースとされて始めた

2026年現在では、20%程がだいたいベースと認識すると良いでしょうか。レストラやサービス業で使われる決済システム(POS)では、パーセンテージをお店側が設定できますが、だいたい18%-20%-23%、バーや高めのレストランであれば、20%-23%-25%、と設定されている事もあります。実際に肌感としてはやはり、20%が一番ベースと思えます。

このパーセンテージは、最低賃金を含む賃金制度、物価上昇も踏まえた市況、決済システムの提案、といった点で少しずつ変わってきているのが分かります。

最低賃金を含む賃金制度

前述の通り、連邦や州の最低賃金の上昇が実際の物価上昇よりも遅く反映されるため、チップ収入で生計を立てている従業員に対しての思いやり・配慮としてチップの割合が上がっている側面があります。下記とも内容が少しかぶる部分があります。

物価上昇も踏まえた市況

物価上昇に比例して、メニュー価格も上がり、同じ%のチップでも実際の収入事態は増えます。しかし実際には、レストランの値上げ幅が物価上昇に追いつかないケースが多く、チップ収入だけでは生活コストの上昇をカバーしきれないという問題があります。

具体的には、

<物価上昇前>

$100お会計に対して$18のチップを受け取る

=税金20%を払った後に受け取るチップ給与しては、$14.4

<10%物価上昇後>

$110お会計に対して$19.8のチップを受け取る

=税金20%を払った後に受け取るチップ給与しては、$15.8

この$15.8というのは、$14.4から9.7%しか増加しておらず、実際には10%の物価上昇に負けている事になります。故に、州や連邦では最低賃金の調整をしてこの差額を調整しようとするものの、それだけでは追いつかず、チップの%自体もあげていく必要があった、という拝見があります。

また上記ではレストランで10%の値上げとしていますが、一般的にここまで大きく値上げをするという事もなく、物価上昇が10%でレストランでの値上げが5%しかない場合には、よりチップのパーセンテージをあげる事でしか手取りの給与が増えないようになっています。

決済システムの提案

上記のような理由から、決済システムや支払時に提案する%自体が上がっている事も理由の一つです。実際にレストランの記載を、18-20-22%から20-23-25%とすれば、お店側のチップ収入が増えるというのは有名な話でもあります。実際にどこまで高い数字を出すのかは、もちろんお店の評判にも関わる所であるのは皆さんにもわかってもらえると思います。

チップの金額:自分が払った後って、誰に払われているの?

これまでは少しわかりやすい例として、レストランを使ってきました。実際に自分がチップを払った後にどのように従業員に分配されているのかも考えてみましょう。

  • フルサービスのレストラン(席に座り、サーバーがいる):だいたい18~22%
  • カウンターサービスのレストラン(カウンターオーダー):だいたい5~10%
  • カウンターサービスのチェーンレストラン(KFC等):払わない
  • バー(カウンターオーダー):だいたい15~20%
  • カフェ(カウンターオーダー):払わない人もいる、5~10%

このようなパーセンテージでお店側にチップが払われますが、実際にキッチンやバーテンダーの従業員には、この金額の20%を払って、サーバーに80%と払っているお店もあったりします。この部分は、本当にお店のポリシーや分配方法がどのようになっているかに寄ります。

ただファストフードのチェーン店等では基本的にチップが求められる事はなく、マクドナルドやKFCではオーダーを受け取るだす。サービスが悪い、とよく言われたりしますが、彼らもチップを受け取っているわけではなく、時給を稼ぐために作って渡すだけなので、チップがあるないかでこのように従業員の姿勢も変わってくるという事もわかってもらえるのではないでしょうか?

最後に:

今回は一例として食事の場としてのチップを話してみました、実際には、ヘアサロンやデリバリーアプリ、ウーバー、ホテル、バレーパーキング(ホテルなどで専門の係員が駐車・出庫を代行してもらうこと)、引っ越しサービス、等の様々な所でチップに直面する事があります。勿論ケースバイケースではあるものの、このチップ収入をベースに生活をしている人たちがいるという事を理解し、在住者はもちろん旅行者もこの文化に沿ってちゃんとした金額を支払ってあげる、という視点も重要だと思います。

日本人からしてみれば、サービスが悪い、他の従業員と雑談をしている、等のように本当にチップ払うほどのサービスなの?と思う事もあるかもしれません。それでも日本のように、メニューに書いてある金額にサービスは入っていわけではない、という大前提を理解する事は重要でしょう。この点は、アメリカらしい個人主義、を示している点でもあるように思います。良いサービスをすれば自分の給与に反映する、食べ物等の商品自体はお店が提供していても、そのサービス自体はお店が提供しているものではなくサーバー個人が提供しているもの、そう考えてみるとより文化の理解が深まるかもしれません。

郷に入っては郷に従え、という言葉が示すように、日本に来ている外国人が日本のマナーを守らない事に怒る日本人がいるのと同様に、我々も米国では米国のマナーを守るというのは礼儀ととらえてみると納得できるかもしれません。是非皆さんの疑問点や質問があればお待ちしています。

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